祭りの後
喧しいくらいの蝉の声に混じって、賑やかな太鼓の音が街外れの空き地から聞こえてくる。
空は燃える様に紅い。日は沈もうとしていてもまだまだ熱気は止まず、湿気混じりの風が身を浴衣に包んだ少女の肌を撫でてゆく。
喧噪の様な祭囃子。夕闇に灯る盆提灯。そう、今宵は祭り。
色とりどりの屋台。香ばしい香り。沸き立つ熱気。汗と人の匂い。
何もかもが生き生きとしている。何もかもが輝いている。
眩しいくらいに。思わず目を細めてしまう。
届かないものに手を伸ばす、そんな羨望混じりの目。
解っていること。解っていること。
眺める事しか出来ない自分。手を伸ばしても触れられない自分。
解っている。軽い絶望だけど、悲しくはない。
こうして一歩離れたところから、其処が例え彼等にとっての彼岸でも、こうして生きた世界を見れるだけで。
心が弾む。口元が緩む。目尻がぐっと、熱くなる。
渦巻く様な暑さ。茹だる様な熱さ。生けるものの輝き。その動き。
彼等の喜び、彼等の音、彼等の舞。
夕日が沈み、宵の帳が降りる。
祭りを締める様に、鮮やかな花火が夜空を照らす。
一様に空を眺める人混みの中で、自分も同じように美しく儚いその輝きを胸に刻みつけた。
そして。硝煙の残り香が風に掻き消される頃には、先刻までの騒ぎが嘘の様に閑散となる。
一抹の寂しさが過ぎるけれど、それもいい。
名残惜しいけれど、そろそろ帰る時間だね。
また、来年の盆に来るよ。
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キリリクSS“祭りのあと”。
お盆をイメージしたものと云うことで、この様に仕上げてみました。
盆踊りには色々謂われが在るようですが、私は死者の魂の慰みなんだと思っております。
それは兎も角、返品可ですので、お気に召さなければご一報を。
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