present


さいはなげげられた




擦り切れたジーンズ。 

Tシャツ一枚、七分丈。 

小銭ばっかの財布をポケットに詰め込んで。 

部屋を出た、サンダルつっかけて。 

携帯は持ってない、わざと。 

塗装の剥げた部屋のキー。 

キーホルダは君の思い出。 

  

馬鹿みたいに晴れ渡った空。 

小鳥の囀りと子ども達の声。 

何処までものどかな住宅街、がに股で歩く。 

ぶらぶら。 

目的地は決まってない、行けたところが行くところ。 

風が北から吹くのなら、僕は南にでも行くとしよう。 

日が西に沈むなら、僕は東に行くとしよう。 

自販機。 

新発売の缶コーヒーは甘いだけだった。 

  

公園はそのまま横切って。 

街角の古本屋冷やかして。 

ただ歩く。 

ひたすらね。 

一人で。 

風は涼しくて。 

生活の音がして。 

みそ汁の匂いがした。 

  

変わらない。 

僕がどんなだって、世界は変わりはしない。 

当たり前だね、当然か。 

歩道橋。 

眼下には急行電車。 

今日も満員だね。 

何一つ変わらない。 

変わらないんだ。 

  

ホントに? 

  

宙を舞う僕の欠片 

さようなら、さようなら。 

全てのものに。 

さようなら。 

   

キーホルダは乱反射して落ちていった。 

変わらないんじゃない。 

変えてなかっただけ。 

何時までも、僕は引きずってたね。 

馬鹿馬鹿しい、かな。 

よな。 

ばいばい、過去の思い出。 

   

端から見れば小さい事。 

でも、貧乏性には大きな前進。 

さぁ、賽は投げられた。 

  

よ、な? 





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キリリクSS“賽は投げられた”。 
自分でわざわざ後戻りできない状態に追い込む。 
そうでもしないと、ケジメの一つすらつけられない。 
そんなもんです。 
返品可ですよ。
 


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