present


螺旋回廊




それは、メヴィウスの輪か。 

それとも憂き世の迷宮なのか。 

今宵もまた、螺旋回廊に影が差す。 

 

日の差さぬ暗き地下。 

無知という名のミノタウロスがそこにいる。 

哀れな身代わり羊が今日も一匹。 

さぁ、時間だ。 

残酷な、小さなお祭りの始まり始まり。 

怪物の爪が、躙り寄る。 

僕は固唾を飲んでそれを見るだけ。 

幾つもの双眼が、同じように見つめてる。 

そう僕らは傍観者。 

絶対安全な螺旋回廊の楽しみ方。 

舞台に上がるのは愚の骨頂。 

遠くで見るのがおつなのさ。 

 

血祭りに上げろ。 

陵辱を。 

屈辱を。 

叩き潰せ。 

括り殺せ。 

ねじ伏せろ。 

二度と立ち上がれないように… 

  

ミノタウロスの咆吼と、呼応するのは僕らの叫声。 

吊し上げられて行く身代わり羊。 

楽しいね、胸がすく。 

溜まらず僕も声を挙げる。 

やってしまえと僕も叫んだ。 



『五月蠅いな』 

 

えっ 



『横槍刺すな』 

 

何だ 



『目障り』 

 

何で僕が… 



『調子に乗るな』 

 

何で… 



『くたばれ』 

 

… 



『糞が』 

 

こんな目に? 

 

遠くでさっきの羊が見てる。 

冷たい目で僕を見てる。 

こっちに来たねと笑ってる。 

気付けばそう、僕は舞台に上がっていた。 

やる側から、やられる方へ。 

身代わり羊のさらに身代わり。 

僕の、長い夜が始まる。 

 

此処は螺旋回廊。 

絡み合う不思議な迷路。 

表が裏で、裏が表。 

何時だって、不安定。 

此処は螺旋回廊。 

醜い祭りの起こる場所。 





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キリリクSS“螺旋回廊”。 
アングラサイトがイメージ。 
見たこと無いから想像ですが。 
ダークさが伝われば幸いです。 
返品可ですのでお気に召さなければご一報を。


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