やつれしゃんした三日月さんは それもそのはず闇あがり
痩せたねと、周りから言われる。
そうかもしれない。
鏡を見る度に、目立つようになった頬骨。
血の気を失った面は蒼白い。
微かに開いた窓からは、肌寒い夜風が吹き込んでくる。
今宵もまた、この都には血風が舞っているのだろうか。
風に乗って届くのは、噎せ返るような鉄の臭い。
『貴方は斬られたりしませんか?』
笑って答えぬ貴方。
『お国の為に』が口癖で。
新しい時代に、一緒になろうと言ってくれた。
けれど私は、別段新しくなくともよいのです。
ねぇ…
貴方の意志を知ってから、暗く根ざした影がある。
気を揉み秘密を胸に押し込めて、貴方の居ない夜を幾星霜。
影は蠢き身を蝕む。
こんなに痩せたのは貴方の所為よ。
だから、ねぇ。
戻って来たら離さない。
離さないと決めたのに。
届く便りは、涙に濡れて。
星の数ほど男はあれど 月と見るのは主ばかり
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キリリクSS“月”をテーマに。
都々逸を使ってみました。
月も都々逸も、風流ですよね。
ちょっと暗い関係、みたいな。
では返品可ですのでお気に召さなければご一報を。